【完全版】トヨタ・アルファード徹底試乗レビュー!Z、エグゼクティブラウンジ、スペーシャスラウンジまで、その実力を丸裸に。

グレード別キャラクター分析
新型アルファードはグレード毎に明確な個性が与えられています。走りの「Z」、おもてなしの「Executive Lounge」、どちらがあなたに合うか比較してみましょう。
究極の後席体験:「走るラウンジ」の内部
最上級グレード「エグゼクティブラウンジ」や4人乗り「スペーシャスラウンジ」の後席は、まさにファーストクラス。長距離移動の概念を変える、最高峰の快適性と機能性を誇ります。
- 振動を吸収する特別なダンパー
- 高い静粛性を実現する徹底した遮音
- 豪華なアームレストと操作パネル
- 分割式サンシェードとアンビエントライト

あなたのためのアルファードはどれ?
グレード選択ガイド
Z グレード
軽快な加速感とバランスの取れた価格が魅力。自分で運転する機会が多く、キビキビとした走りを楽しみたいドライバー向けのグレード。
Executive Lounge
後席の快適性を最優先。”とろけるような”と評される極上の乗り心地。大切な人を乗せる「おもてなし」を重視するならこの一台。
Spacia Lounge
後席2座のみの究極のショーファーカー。移動空間そのものに最高の価値を見出す、選ばれしオーナーのための選択肢。
高級ミニバンの絶対王者、トヨタ・アルファード。街中でも見かける機会が増えてきました。もはや単なる移動手段ではなく、ステータスシンボルとしても確立されたこのクルマは、一体どこまで進化したのでしょうか。
今回、人気の中心となるであろう「Zグレード」、最上級のおもてなしを約束する「エグゼクティブラウンジ」、そして究極の4人乗りショーファーカー「スペーシャスラウンジ」という、性格の異なる3つのグレードを徹底的にレビューします。本記事では、読者の皆様にその真価を余すところなくお伝えします。
威風堂々。新型アルファードのデザイン哲学
まず対面して感じるのは、その圧倒的な存在感です。特にフロントマスクは、押し出し感の強い巨大なグリルが特徴で、先代モデルよりもさらに威厳と迫力を増しています。これは好みが分かれる部分かもしれませんが、このクルマが持つ「KING of MINIVAN」としての風格を象徴しているように感じました。
しかし、ただ大きいだけではありません。サイドに回ると、単なる「大きな箱」ではなく、ボディパネルには複雑で豊かな抑揚がつけられており、光の当たり方によって様々な表情を見せてくれます。このあたりは、デザイナーの巧みさが光る部分で、巨体でありながらも飽きさせないデザイン性の高さは、さすがアルファードと言えるでしょう。エクステリアデザインだけでも、所有する喜びを十分に満たしてくれる。それが新型アルファードの第一印象です。
これが基準か!スタンダードにして本命「Zグレード」の走り

多くの人が検討するであろう、スタンダードモデルの「Zグレード」。まずはこのクルマから試乗を開始しました。搭載されるのは2.5Lのガソリンエンジンです。
乗り心地と静粛性
走り出してすぐに感じたのは、静粛性の向上と乗り心地の滑らかさです。プラットフォームが一新された恩恵は大きく、車内に入ってくるノイズは先代よりも明らかに低減されています。

しかし、正直に言うと、その進化は劇的とまでは言えません。特に、首都高速のつなぎ目や路面の荒れた場所を通過する際には、「ゴツッ」という硬質な振動がダイレクトに伝わってきました。これは、後ほど試乗する上級グレード「エグゼクティブラウンジ」が特別なダンパーを装備していることを知ると、なるほどと納得できる部分ではあります。後席に乗せてもらった際も、特にリアタイヤからの突き上げ感が若干気になりました。
決して乗り心地が悪いわけではありません。むしろ、これだけのボディサイズと重量を考えれば、非常によくまとめられています。ただ、アルファードという名前から抱く過度な期待があると、少し肩透かしを食らうかもしれません。
走行性能
加速性能は十分以上です。車重がエグゼクティブラウンジよりも70kgほど軽いため、アクセルを踏み込むと想像以上に軽快な加速感を味わえます。街中でのストップ&ゴーや、高速道路への合流でストレスを感じることはまずないでしょう。

一方で、少し気になったのは高速巡航時のエンジン音です。追い越しなどでアクセルを深く踏み込むと、「ウォーン」というエンジン音が結構なボリュームで車内に響いてきます。静粛性が高いがゆえに、かえってエンジンの存在感が際立ってしまうのかもしれません。このあたりは、ドライバーズカーとして割り切るか、あくまで後席の乗員のためのクルマと捉えるかで評価が分かれそうです。
運転支援と使い勝手
最新の運転支援システムも試しましたが、レーンキープアシストのハンドル支援が、時として自分の操作と干渉するように感じられ、少し煩わしく思う場面がありました。システムに完全に任せるか、自分で運転に集中するか、どちらかに割り切った方がスムーズに走れます。とはいえ、渋滞時の追従支援機能は非常に優秀で、ドライバーの疲労を大幅に軽減してくれることは間違いありません。
後席のテーブルがプラスチック製で滑り止めがないため、スマートフォンなどを置くと滑り落ちやすい点は、少し残念なポイントでした。
Zグレード総括
Zグレードは、決して悪いクルマではありません。むしろ、ミニバンとしての基本性能は極めて高く、購入して後悔することはまずないでしょう。
しかし、それはあくまで「アルファードの中のスタンダード」としての話。乗り心地や静粛性において、最高級を期待すると少し物足りなさを感じるかもしれません。価格と性能のバランスが最も取れた、いわばアルファードの基準を知るためのグレード。それがZグレードの立ち位置だと感じました。
極上の”おもてなし空間「エグゼクティブラウンジ」の実力

次に試乗したのは、2.5Lハイブリッドを搭載した最上級グレード「エグゼクティブラウンジ」です。結論から言いましょう。これは、Zグレードとは全く別の乗り物でした。
乗り心地

その違いを最も感じたのが、乗り心地です。Zグレードで感じた路面のつなぎ目でのゴツゴツとした硬さが嘘のように消え去り、まるで絨毯の上を滑るかのようにスムーズに走り抜けていきます。これは、周波数感応型の特別なショックアブソーバーと、乗り心地を重視した17インチタイヤの組み合わせによる恩恵です。
荒れた路面を通過しても、不快な振動は一瞬で収束し、フロアが揺すられる感覚もありません。これなら、長距離の移動でも後席のVIPは全く疲れないでしょう。静粛性もZグレードからさらに一段向上しており、車内はまるで高級ホテルのラウンジのよう。ロードノイズも風切り音も巧みに遮断され、本当に静かです。「大トロ」という表現がまさにぴったりな、とろけるような乗り心地でした。
走りと快適性の両立

これだけ後席の快適性を追求していると、運転は退屈なのでは?と思うかもしれません。しかし、そんなことはありませんでした。ボディ剛性が非常に高いため、カーブで車体がよれる感覚は皆無。旋回中にアクセルを踏み込んでも、しっかりと四輪が路面を捉え、安定しきっています。
ブレーキホールドからの発進も驚くほど滑らかで、ギクシャクした動きは一切ありません。ハイブリッドシステムによる加速も力強く、フル乗車で坂道を登るような場面でも、力不足を感じることはないでしょう。
ただし、ハンドリングのシャープさという点では、よりスポーティな味付けのヴェルファイアや、オプションの19インチタイヤ装着車に軍配が上がります。とはいえ、これはあくまで比較すればの話。運転性能と快適性を極めて高いレベルで両立しているのが、エグゼクティブラウンジの真骨頂です。
後席の小さな不満点
これほど完璧に見えるエグゼクティブラウンジですが、後席にもいくつか気になる点がありました。まず、スマートフォンを置く専用のスペースが見当たらないこと。また、後席から助手席をスライドさせたりリクライニングさせたりする機能がないのも、ショーファードリブンカーとしては少し不便に感じました。夜間、アンビエントライトがフロント周りに少なく、後席から見ると運転席が真っ暗に感じられるのも、改善を期待したいポイントです。
エグゼクティブラウンジ総括 選ぶべき理由が明確な一台
Zグレードとは、その乗り味には大きな隔たりがあります。後席の快適性を何よりも最優先するならば、選ぶべきは間違いなくこのエグゼクティブラウンジです。先代からの進化幅も最も大きく、コストパフォーマンスという点でも、その価値は十分にあると感じました。「大切な人を乗せる」という明確な目的がある方にとって、これ以上の選択肢はないでしょう。
究極のショーファードリブン「スペーシャスラウンジ」という異次元

最後に試乗したのは、まさに究極のアルファード、「スペーシャスラウンジ」です。これは、後席を2座のみとした、完全な4人乗り仕様。パワートレインはプラグインハイブリッド(PHEV)で、価格は約1500万円に迫ります。
レクサスLMとは違う「繋がる」空間
このクルマの最大の魅力は、その空間コンセプトにあります。兄弟車であるレクサスLMの4人乗り仕様が、運転席と後席を完全に隔壁で仕切るのに対し、このスペーシャスラウンジはあえて前席との一体感を残したオープンな空間になっています。

これにより、後席のVIPが孤独を感じることなく、ドライバーや助手席のスタッフと自然に会話を交わすことができます。これは、ビジネスシーンでの利用はもちろん、家族での特別な旅行など、様々なシチュエーションで大きな価値を持つと感じました。この繋がりこそが、スペーシャスラウンジが持つ最大の魅力であり、LMとの明確な差別化点です。
PHEVがもたらす、静かで力強い走り
PHEVの走りは、まさに異次元でした。モーターが主体となって巨体を軽々と動かし、その加速は驚くほど力強く、そして静かです。重量が増したことで、乗り味にはどっしりとした重厚感が生まれ、高速道路での横風などにもびくともしない安定感を誇ります。
標準装備の19インチホイールのため、エグゼクティブラウンジほどのしなやかさはありませんが、不快な突き上げはうまく抑えられており、静粛性は全グレード中トップ。特に前席の快適性は特筆もので、まさに最高級車に乗っているという実感を味わえます。
まさに「王が座る椅子」と、唯一の欠点
後席に座れば、そこはもう言葉を失うほどの空間です。通常の7人乗り仕様の2列目と比較して、膝元空間は実に42cmも拡大されており、足を組んでも余裕綽々。その豪華なシートは、まさに「王が座る椅子」という表現がふさわしいでしょう。

しかし、唯一にして最大の残念な点が。この豪華な後席シートは、前後スライドができないのです。リクライニングやオットマンの調整は自由自在ですが、広大な空間をより有効に使うためのスライド機構がないのは、非常にもったいないと感じました。
スペーシャスラウンジ総括
総合評価は80点といったところでしょうか。このクルマは、もはやミニバンというカテゴリーには収まりません。自分で運転を楽しむクルマではなく、後席で過ごす移動時間を、いかに有意義で快適なものにするか、という一点に全てを捧げた、まさに「走る執務室」であり「究極のラウンジ」です。企業の役員車として、あるいは大切な家族との特別な時間を過ごすためのクルマとして、これ以上の選択肢は考えられません。価格に見合うだけの、いや、それ以上の価値がここにはあります。
全グレードに共通するアルファードのDNAと課題
最後に、今回試乗した全グレードに共通する、アルファードならではの特性と、今後の進化に期待したい課題について触れておきましょう。
視界 テクノロジーでのカバーが必須
まず、運転席からの視界です。フロントのダッシュボードが長く、Aピラーも太いため、死角はどうしても大きくなります。特に、小さな子供などが車の直前にいる場合は、かなり注意が必要です。後方視界も同様で、デジタルインナーミラーはもはや必須装備と言えるでしょう。この点は、ボディサイズを考えれば仕方のない部分ですが、購入を検討する際は必ず実車で確認すべきポイントです。
実用性 ミニバンの王道
3列目シートの格納方法は、左右への跳ね上げ式。床下に完全格納できるライバル車と比較すると、荷室の幅が制限されるというデメリットはありますが、その分、広大な床下収納が確保されており、積載性に不満はありません。2列目シートを電動で操作できるなど、使い勝手への配慮も万全です。
燃費 巨体を忘れさせるハイブリッドの実力
そして、特筆すべきはハイブリッドモデルの燃費性能です。これだけの重量級ボディでありながら、特に街中での燃費は驚異的です。トヨタのハイブリッドシステムがいかに優れているかを改めて実感させられました。これは、どのグレードを選ぶ上でも大きな魅力となるはずです。
結論 あなたはどのアルファードを選ぶのか?
今回、性格の異なる3つのアルファードを徹底的に乗り比べてみて、改めてその奥深さを知ることができました。新型アルファードは、単一の車種でありながら、グレードごとに明確な哲学とターゲットユーザーが存在します。
- 「Zグレード」は、アルファードというブランドを最もリーズナブルに手に入れられる、まさに「基準」となる一台。乗り心地に最高の贅沢を求めなければ、ファミリーユースからビジネスまで、オールラウンドにこなせる優等生です。
- 「エグゼクティブラウンジ」は、後席の快適性に全てを捧げた、「最高のおもてなし」を提供する一台。大切な人を乗せる機会が多い方にとって、これ以上の選択肢はありません。
- 「スペーシャスラウンジ」は、移動空間そのものに価値を見出す、「究極のショーファーカー」。後席で過ごす時間を、ビジネスやプライベートの充実に繋げたいと考えるエグゼクティブにとって、唯一無二の存在となるでしょう。
あなたがアルファードに求めるものは何ですか? 走りの軽快さですか? 至高の乗り心地ですか? それとも、誰にも邪魔されないプライベートな空間ですか? ぜひ本記事を参考に、ご自身のライフスタイルに最適な一台を見つけていただければ幸いです。
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