スズキから待望のネオレトロモデル、「GSX-8T」と「GSX-8TT」が新たに投入された。定評のある776cc並列2気筒エンジンを搭載し、伝統的な魅力と現代的な性能を両立させた注目すべき2台である。またこの2台の新車種はGSX-8S、GSX8Rの兄弟車となっており、そちらも要チェックである。


GSX-8TとGSX-8TTの概要

両モデルは、V-Strom 800やGSX-8Sなどと共通の776cc並列2気筒エンジンとスチール製フレームを基本骨格とする。その上で、それぞれ異なる個性を持つネオレトロな造形を纏っているのが最大の特徴である。
- GSX-8T: 1960年代から70年代の伝統的な自動二輪、例えばスズキT500を想起させる雰囲気を纏ったロードスタースタイルである。
- GSX-8TT: 8Tを基盤とし、往年の耐久レーサー、ヨシムラGS1000などを彷彿とさせるビキニカウルや風防を装備した、よりスポーティなカフェレーサースタイルである。

GSX-8T / 8TTの国内価格予想

ここまでの分析を踏まえ、いよいよ具体的な価格を予想する。プラットフォーム内の序列、海外での価格差、そして競合との市場競争力という3つの視点から、その価格に迫る。
GSX-8Tの価格予想 120万円台前半
GSX-8Tは、ベースのGSX-8Sに対して、燃料タンクの大型化(14L→16.5L)という明確な機能向上を含むものである。これは単なる外観の変更以上の価値がある。
参考までに、同じプラットフォームのV-Strom 800は、大型スクリーンやリアキャリアなども備えたツーリング仕様で、GSX-8Sより154,000円高価である。GSX-8Tの向上した内容はそこまで広範ではないため、価格上昇もより穏やかになるはずである。
これらの要素から、GSX-8Tの国内価格は1,200,000円~1,220,000円の範囲に収まると予想する。これはGSX-8Sに対して8~10万円程度の、極めて妥当な価格設定と言えるだろう。
GSX-8TTの価格予想 120万円台後半
次にGSX-8TTである。ここで参考となるのが英国での価格設定だ。英国ではGSX-8Tが9,599ポンド、GSX-8TTが9,999ポンドで発表されている。その差は400ポンドで、8Tに対する価格上昇率は約4.2%である。
これを先ほど予想したGSX-8Tの日本価格(約120万円)に当てはめると、約5万円の上乗せとなる。スズキの純正アクセサリーでシングルシートカウルが約2万円、アンダーカウルが約2.5万円であることを考慮すると、この5~6万円という価格差は極めて現実的である。
よって、GSX-8TTの国内価格は1,260,000円~1,280,000円の範囲になると強く予想する。競合比較で見る戦略的ポジショニング
この予想価格が、市場でどれほど魅力的かを見ていく。
モデル名 | エンジン形式 | 最高出力 | 主要装備 | 価格(税込) |
カワサキ ヴェルシス650 | 並列2気筒 649cc | 67PS | トラコン、TFTメーター | 1,155,000円 |
スズキ GSX-8T(予想) | 並列2気筒 776cc | 82.9PS | S.I.R.S.、クイックシフター | 約122万円 |
スズキ GSX-8TT(予想) | 並列2気筒 776cc | 82.9PS | S.I.R.S.、専用カウル | 約128万円 |
ヤマハ トレーサー9 GT | 並列3気筒 888cc | 120PS | 電子制御サス、フル装備 | 1,595,000円 |
この表が示すように、GSX-8Tと8TTは、手頃な価格ながらも基本設計にやや旧さを感じるヴェルシス650と、高性能・高価格なトレーサー9 GTとの間に存在する、広大な価格と性能のギャップを完璧に埋める存在となる。最新の電子制御と強力なエンジンを、120万円台という極めて競争力の高い価格で提供することで、このクラスの新たな基準となる可能性を秘めている。
英国での価格と発売時期

英国での販売価格と発売時期は以下の通りである。
- GSX-8T: £9,599(約1,882,000円)
- GSX-8TT: £9,999(約1,960,000円)
- 発売時期: 数週間以内にディーラーに入荷予定である。(英国のみ)
保証: 標準で3年保証が付帯し、正規ディーラーでの定期的な保守整備を受けることで最大7年までの延長が可能である。
価格はGSX-8TTのほうがGSX-8Tに比べ、やや高いことが分かった。
デザインとスタイリング
イタリアのデザイナーによって描かれ、日本で磨きがかけられたデザインは、両モデルに明確な個性を与えている。
GSX-8T:時代を超えるクラシック・ロードスター

伝統的な丸形LED前照灯とバーエンドミラーが、正統的でありながら近代的な印象を与える。容量16.5リットルの燃料タンクとブラッシュドシルバーのラジエーターシュラウドは、上質な金属感を演出。ゴールドの倒立フォークとブラックのホイールが足元を引き締めている。
カラーバリエーション
- キャンディ バーントゴールド
- メタリック マットスチールグリーン
- メタリック マットブラック
GSX-8TT:往年のレーサーを彷彿とさせるカフェレーサー

最大の特徴は、70年代の競技用車両を想起させる前照灯カウルと風防である。エンジン下部にはベリーパンも装備され、より攻撃的な雰囲気を強調している。タンクとカウルにはストライプデカールが施され、ホイールも車体色に合わせたカラーリングとなっている。
カラーバリエーション
- グラススパークルブラック(レッドのホイール&デカール)
- パールマットシャドウグリーン(ゴールドのホイール&ストライプ)
エンジンとパフォーマンス

心臓部には、定評のある776cc並列2気筒エンジンを搭載。270度クランクがもたらす特有の鼓動感と、低回転から高回転まで滑らかに吹け上がる力強い性能が魅力である。エンジンはGSX-8T、GSX-8TTどちらも共通である。
- エンジン形式: 776cc DOHC並列2気筒
- 最高出力: 80bhp / 8,500rpm
- 最大トルク: 57lb ft / 6,800rpm
- その他: 振動を低減するクロスバランサー、コンパクトなショートエキゾーストを搭載する。
シャシーと足回り

しなやかで安定感のあるスチール製フレームとアルミスイングアームを共有する。サスペンションにはKYB製の倒立フォークとリアショックを採用し、スポーティな走行を支える構成だ。こちらもGSX-8T、GSX-8TTどちらも共通である。
- フロントブレーキ: 310mm径ダブルディスク、Nissin製ラジアルマウントキャリパー
- リアブレーキ: 240mm径シングルディスク
- フロントフォーク: KYB製倒立フォーク(8Tはゴールド、8TTはブラック)
- リアサスペンション: KYB製モノショック
先進の電子制御システム

伝統的な外観とは裏腹に、最新の電子制御システム「S.I.R.S(スズキ・インテリジェント・ライド・システム)」を搭載し、ライダーを支援する。これらの電子制御はGSX-8T、GSX-8TTどちらの車種にも搭載されているので安心して欲しい。
- フルカラーTFT液晶メーター
- トラクションコントロール(3段階+OFF)
- パワーモードセレクター(3段階)
- 双方向クイックシフター
- ローRPMアシスト(発進・低速走行を補助)
- スズキイージースタートシステム
- USB Type-Cソケット(急速充電対応)
【筆者の視点】どちらを選ぶべきか? モデル選定のヒント

ここまで価格やスペックを紹介してきたが、最後に「では、自分はどちらを購入すべきか?」と悩む者へ、筆者なりの視点を提示する。
GSX-8Tは「賢いカスタムの素体」
コストパフォーマンスを重視し、自分だけの一台を構築したい乗り手にはGSX-8Tを推奨する。8TTとの価格差である約6万円があれば、ツーリングに便利なタンクバッグや、冬季に重宝するグリップヒーターなど、自身の乗り方に合わせた実用的な装備に投資できる。素性が良いからこそ、自分だけの仕様に仕立てる楽しみが広がる。
GSX-8TTは「完璧なファクトリー・スタイル」
一方で、出荷時の状態で完成されたフォルムを求める乗り手にはGSX-8TTが最適である。後付けでは得られない、メーカーが設計した一体感のあるカウリングは、何物にも代えがたい魅力を有する。その価格プレミアムは、デザインの完成度と、手間なく理想のスタイルを手に入れるための対価として十分に納得できる
GSX-8TとGSX-8TTの価格とスペックまとめ

スズキが新たに投入したGSX-8TとGSX-8TTは、V-Strom 800やGSX-8Sで定評のある776cc並列2気筒エンジンと共通の車体を基本骨格とし、近年需要の高いネオレトロ市場へ本格的に参入する意欲的な機種である。
正統的なロードスタースタイルの「GSX-8T」と、往年のレーサーを彷彿とさせるカウルを纏う「GSX-8TT」という、明確に異なる個性を持つ二つの選択肢を設けたことで、幅広いライダー層の嗜好に応えるものであろう。
伝統的なデザインに、クイックシフターやTFTメーターといった最新の電子制御を組み合わせることにより、「外観は伝統的、機構は最先端」という現代の要求を見事に捉えている。信頼性の高い基本構成を活かしたスズキの新たな試みが、市場で如何なる評価を得るか、その動向が注目される。
そして、分析の結果、GSX-8Tは120万円台前半、GSX-8TTは120万円台後半という、戦略的な価格設定となる可能性が極めて高い。
この価格は、ミドルクラス市場において圧倒的なコストパフォーマンスを発揮し、多くの乗り手にとって魅力的な選択肢となるであろう。
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